2015年2月26日木曜日

「胃が痛くなる」とCAが恐れる、非常救難訓練を体験してみた

「私も訓練を受ける側だった時は、受ける2~3ヵ月前になるとキリキリと胃が痛くなってきたんですよ」といきなり教官からの脅し(!?)を受けてしまったワタクシ。


向かったのは、羽田空港に隣接しているJALの救難訓練施設。なんとここで、キャビンアテンダント(CA)が年に1度受ける救難訓練を体験させてもらえるとのこと。あの脱出用滑り台(「スライド」と呼ぶらしい)を滑り下りられると思うと、もうドキドキです。


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内容のレクチャーを受けた後、まずはラジオ体操で準備運動。ラジオ体操に英語版があることをはじめて知りました(といっても写真じゃわかりませんね)。


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このころまでは雰囲気も和やかだったのですが……。


今回体験したJALの「定期救難訓練」は、緊急時の対応にかかわる知識と能力を再確認するために、すべての運航乗務員と客室乗務員が年に1回受けるもの。体験したのは「実技」のみですが、カリキュラムには「座学」や「筆記試験」も含まれています。


ボクもはじめて知ったのですが、この訓練は正確に表現するならば「試験」。運転免許証に例えると「更新」ではなく「検定」で、定められた成績をおさめないと再試験を受けてクリアするまで乗務停止になってしまうんだそうです。毎年誕生日の月におこなうそうですが、誕生日前を前に胃がキリキリしてくるなんてCAさんも大変ですねぇ……。


ちなみに今回取材に伺ったのは2014年4月から使われているJALの新しい訓練施設。大型のボーイング777と小型のボーイング737と大小2つのモックアップがあり、音でさらなる臨場感を再現するためのウーファーが組み込まれていたり、機内でのコックピットと客室のやり取りを聞けるイヤフォンが各シートに備わっていたり、状況によってスモークが出てきたりと、安全レベルのスキルアップを目指して様々な工夫が凝らされた訓練施設なのだそうです。


訓練プログラムとして用意されたシーンは合計13パターン。今回は、前輪にトラブルが発生して、着陸後に異常傾斜状態で停止した機体から脱出する「突発陸上脱出訓練」と、エンジントラブル発生による海上への緊急着水を想定した「予告海上脱出」の2つの訓練を体験しました。


前方のモニターや窓にはその内容に応じた風景が映し出され、音とともに臨場感を高めます。


どちらの訓練にも共通するのは、乗客を落ち着かせるパニックコントロール。


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ほとんどの乗客は、緊急事態に遭遇するとパニックに陥りそうになるはず。そこで、どれだけ毅然とした態度で乗客を落ち着かせられるかがCAとして重要であり、安全性を高めるポイントになってきます。


当然、インストラクターの表情はいつものCAスマイルではなく怖いほどの真顔。「あなたは脱出する人を援助してください」と非常口前の席に座っていたボクへの指示が的確だったのは言うまでもありません。


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機外への脱出は見るとのやるのでは大違いですね。こうして立ってみると、スライドは下から見ていた以上に傾斜がきついうえに高低差はけっこうなもの。実は、滑り降りる最初の一歩をちょっとだけためらいました。


しかも滑ってみたら、予想以上にスピードがついてまたビックリ。滑った先にあるクッションマットは飾りじゃありません。


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インストラクターの滑りは、さすがの安定感。


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脱出訓練に使うモックアップは複数あり、どれもドアは実際の地上からの高さと同じになっています。この写真はボーイング747のもの。スライドが出ているドアは1階で、その上にある開口部は2階部分。建物だと3階程度となるここから滑り降りるのは、かなりの勇気が必要だと思います。


今回は救難訓練とは別に、機内で急病人がでたことを想定した救急訓練の様子も見学。空の上での万が一に備え、安全と真摯に向かい合う姿を垣間見ることができました。


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CAというと、多くの人は笑顔でサービスする姿を思い浮かべると思います。ボクだってその一人です。しかし、それはCAの役割のごく一部でしかありません。彼女ら(彼ら)は保安要員としての任務こそが重要で、万が一の際には1人でも多くの人の命を守るための“完璧な”行動が求められるのです。


「乗務員として実際に経験することはないかもしれません。しかし、訓練を積んで万が一の際にしっかりと動けるようにしておくことが大切なのです」とインストラクター。「笑顔だけのCAは必要ないのです」という言葉が印象的だった、非常救難訓練体験でした。こうして空の安全・安心が保たれるのです。


(工藤貴宏)


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